新書『冤罪 なぜ人は間違えるのか』12月6日発売のご報告
「もう二度と同じような冤罪事件が起きないようにしたい」
プレサンス元社長冤罪事件の無罪判決後に抱いた想いを元に、2023年、世界中の冤罪の知識を体系化したうえで1冊に集約した「冤罪学 冤罪に学ぶ原因と再発防止」(日本評論社)を出版しました。
ありがたいことに、この本はたくさんの方々に支えていただきました。
刑事・少年司法研究センター(ERCJ)様から守屋研究奨励賞をいただき、同センターの2024年の年間研究会のテーマに指定いただきました。木谷明・元裁判官から「冤罪問題に関する「基本書」と呼ぶにふさわしい」との帯文をいただいたほか、村山浩昭・元裁判官、法学者の指宿信教授、前田朗教授、新屋達之教授、心理学者の厳島行雄教授、金岡繁裕弁護士らに書評をいただきました。
法律家だけでなく、日本経済新聞、東京新聞、毎日新聞、TBSラジオ「荻上チキ・Session」、弁護士ドットコムニュース、弁護士JPニュース等に「冤罪学」を取り上げていただき、元外交官・佐藤優様らに書評をいただきました。
他にもたくさんの方々に「冤罪学」をご紹介いただきました。
出版から1年が経過したという一つの節目として、改めて皆様にお礼申し上げます。
『冤罪学』は学術書(基本書)として書いたものであったため、主な読者としては刑事司法関係者(裁判官、検察官、弁護士、警察官、司法記者等)を想定しておりました。
しかし、この1年間でたくさんの市民の方々に『冤罪学』を手にとっていただきました。
学術書として難解な言葉も多かったはずの『冤罪学』を、たくさんの付箋をはり、何か所にもアンダーラインを引きながら読まれている読者の方々を目にして、市民向けの分かりやすい冤罪の本を書かなければならないと思い立ちました。
『冤罪学』のテーマである「冤罪を学び、冤罪に学ぶ」は決して刑事司法関係者だけのものではなく、”全ての人たちと共に「冤罪を学び、冤罪に学ぶ」”ということが実現できるのであればそれは素晴らしいことなのではないかと思ったのです。
仕事や勉強、育児の合間を縫って書かなければならず、決して楽な道中ではありませんでしたが、身の回りの方々やSNS上の方々に支えられ、なんとか書き進めることができました。
このようにして、新書「冤罪 なぜ人は間違えるのか」を集英社インターナショナルから12月6日に出版する運びとなりました。
この本は、『冤罪学』をもとに、日常生活でも活かすことのできる冤罪の教訓をよりたくさんの方々に届けようとしたものです。
法律や認知心理学の知識をなるべく分かりやすく説明しており、法律家の方々にとっても新たな学びのある本になっているかと思いますし、法律家以外の方々にとっても読みやすい本になっているかと思います。
2023~2024年は冤罪や人質司法といった刑事司法の問題が大きく取り上げられ、刑事司法にとっても一つの歴史の転換点が来ていると思います。
しかし、刑事司法の改善や冤罪の防止は私たち刑事司法関係者だけでは実現できません。法律改正の原動力となる世論などを、市民の皆様の力が必要不可欠です。
将来の冤罪を1件でも減らせるよう一生懸命書きましたので、本書が皆様のお手元に届きますと幸いです。
【目次】
序章 人は誤る
第1章 冤罪とは何か
第2章 「負けへんで!」山岸忍さんの戦い
第3章 なぜ人は間違えるのか
(1)思い込みが冤罪を作る
(2)バイアスという「落とし穴」
(3)なぜ「直感的判断」は危険なのか
(4)はじめに「予断」ありき
(5)正義感が冤罪をもたらすわけ
第4章 組織もまた誤る
第5章 なぜ人は同じ間違いを繰り返すのか
第6章 「冤罪」はこうして生まれる
(1)「誤判冤罪」のメカニズム
(2)裁判における「事実」とは何か
(3)日本における「自白偏重」の伝統
(4)日本が「人質司法の国」と言われるわけ
(5)虚偽供述を産み出す捜査手法とは
(6)もし犯人と見間違えられたら
(7)科学捜査が生む冤罪
第7章 なぜ冤罪は繰り返されるのか
第8章 冤罪学から死刑廃止論を考える
第9章 イノセンス・プロジェクトという試み
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