もし取調べを受けることになったら・・・
日本の取調べの問題点と可視化の必要性
わが国の刑事事件では、かつては警察でも、検察庁でも、取調べは完全な密室で行われてきました。
2016年に刑事訴訟法の一部が改正され、一定の対象事件(裁判員裁判対象事件、検察官独自捜査事件)の身体拘束下の被疑者取調べに限定されますが、捜査機関に対し取調べ全過程の録画・録音(取調べの可視化)が義務づけられました(2019年6月までに実施)。 すでに対象事件については、警察、検察ともに運用として、取調べ全過程の録画・録音を実施または試行するようになっています。特に、検察取調べでは、対象事件以外にも取調べの可視化を行うことが多くなっています。わが国でも、ようやく取調べの可視化時代が到来したと言えます。但し、警察では対象事件以外についてはなお、録画・録音されることはほとんどありません。また、海外の制度では一般的に認められる取調べに弁護人が立ち会う権利は認められていません。さらに弁護人依頼権は憲法上保障されていますが、取調べに先立ち、弁護人に予め相談する機会が保障されているわけではありません(イギリスなどでは、被疑者が希望すれば、弁護人との相談が終わるまで取調べは開始されません)。
また、取調べの可視化の機会が多くなったとは言え、取調べの内容は、供述した本人の言葉そのものが記録されるのではありません。取調官があたかも本人になったかのようにして、調書にまとめてしまいますので(一人称物語式調書)、取調官の作文や誤解が紛れ込んで、意味やニュアンスが変わってしまうことはよくあります。
取調べの可視化が不十分な上に、このようなわが国の調書作成慣行もあり、今なお取調べの際に、自白強要をされた、あるいは言ってもいないことを勝手に作文されて調書にされてしまったという訴えは続いています。
また、取調べの可視化がなされていても、孤立無援の密室であることは変わりありません。取調室で取調官と向き合わなければならない心理的圧迫は大きなものがあります。つい記憶に違うことを言ってしまうことを話してしまう危険性も否定できません。
したがって、取調べの可視化をさらに拡げていくことはもちろん、弁護人によるアドバイスの充実、取調べ開始前のアドバイスの保障、さらには取調べの弁護人の立会いの法制化など、まだまだわが国の取調べについては、運用は法制度の面で改善しなければならない点がたくさんあるのです。
この取調べの可視化問題の詳細については、日弁連のホームページや、取調べの可視化を推進する会のホームページ、 ブログを参照してください。